大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2719号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(判旨)

記録によるも、借家人甲において本件犯行前の所論期日までに本件家屋を明渡す旨を約したこと及びその居住権を抛棄したことは、これを確認するに由がないのみならず、仮に家屋賃貸借契約の解除により甲において明渡義務が発生したとするも、同家屋を現実に明渡した事実はついにこれを認め得るに由がない。寧ろ却つてその初め、本件家屋を適法に借り受けた甲は、曾つてその明渡を求められたことはあるが、家賃を支払いながら、当時その家屋に寢泊りし、昭和二六年九月下旬頃生活上当時一二才の長男を同家の近隣に住む乙に預け、居内には自己の家財道具を置き、その出入口を釘付けし、右乙に不在中の留守番を依賴して橫須賀方面に出稼に行き、爾月に三回位宛帰宅しては同家屋に宿泊してこれを自己の住居に使用していたことが明白である。果して然らば、然る以上、被告人は甲の承諾を受くることなく、敢てその戸締りを破壞して屋内に立入り同人の荷物を他に搬出したというのであるからその所為は、とりもなおさず刑法第一三〇条にいわゆる故なく人の住居に侵入したとあるに該当し、同条所定の罪責を免かれ得べき限りではない。

而して所論によれば、被告人は、本件所為当時、丙が同家屋に居住すべく遠路態々引越荷物をトラツクに積んで到着したところから、甲の留守番である乙及び市警察署員立会の上甲の荷物を整理しようとしたが拒否せられ止むなく近隣者の立会を得て、本件所為に及んだもので家屋の管理者として本件所為に出ずるより外適法な所為に出ずべきことを期待し得なかつたものであるから被告人に犯罪責任なしという趣旨の主張をしているけれども、元丙がトラツクに引越荷物を積載して到着したのは、被告人において、甲の右家屋居住の前示顛末を知悉してい乍ら、理不盡にも丙に対し、同人が引越荷物を持参次第何時でもこれが家屋に居住せしむることを約した結果によるものであつて、到底所論謂うが如き期待可能性不存在の理を容るるの余地はないのみならず、敢て居住者甲の不利益な所為に出でた本件につき同人のため事務管理の措置に出でたものとする所論もまた当らない。

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